新年あけましておめでとうございます。
今年初めてのコラム投稿となります。また一年間いろいろと勉強をしながらコラム更新を続けていきたいと
考えていますので、よろしくお願いいたします。
今回のコラムは、「AM(3Dプリンター)部品を量産化していくためのポイントは?」です。AMの認知度が徐々に広がってきて、企業規模の大小問わず「自社の製品にAM技術をどのように取り入れていくのか」ということへの取り組みが進んできている実感があります。ただし、様々な課題にぶつかることにより(各社ごとに問題に違いはあるかとは思いますが・・・。)進捗としては十分なものではないかもしれません。
海外では、すでにAM活用が量産フェーズに移っていることは、これまでのコラムでもお伝えしておりますが、その中でも最も先進的なAMプロセスを実現している米GEアディティブ社が考える「AM量産への移行にあたり考慮すべき5つのポイント」について、考えていきたいと思います。
AMの造形プロセスには数千とは言わないまでも、数百ものパラメータが存在することをふまえて、金属粉体材料の製造方法から、造形部品の品質検査技術まで、あらゆるものを考慮します。
一番には、設計技術ですね。AMの造形プロセスには様々パラメータが存在し、それは造形方法や設備、材料などにより千差万別です。最終的に求められる製品の機能から「どの材料が最も適しているのか」「造形プロセスを考慮した形状設計」「造形部品の品質検査」などあらゆることを考慮する必要があります。設計者・開発者がAMへの理解を深めていかないと、その特性を生かした設計をすることができず、結果的にAM技術のメリットを生かすことができないという結果に終わってしまいます。
リードタイムやハードウェアの最終コストは、ビジネス戦略によって大きく左右されます。内製と外部委託の最適な組み合わせを決めるためには、主要な後処理工程(HIP、VSR、サポート除去最終加工)を吟味し、考慮する必要があります。
どのような会社とどのような役割分担でアライアンスを組んでいくのか?これが非常に重要な点になるといえるようです。
試作段階から量産へと移行する際の最大のハードルは、部品、材料、およびコスト要件に最も重要な要素Xを特定し、文書として書き出すことです。
日本の良いところでもあり、同時に悪いところは、「完璧を目指す」というところかもしれません。これ自体はものづくりに非常に重要な点ではあると思いますが、世の中に完璧なものは存在せず、どうしてもスタートアップに遅れてしまうという欠点もあります。そのプロジェクトで何を目指すのかを明確にし、それぞれのファクターの許容範囲を事前に決めておくことは、重要な点であるといえます。
信頼性の高い一貫した品質管理を確保するために、造形に影響を与える要因をモニタリングし制御する最善の方法を決める必要があります。統計的な品質管理手法を使用すると、要求の厳しい業界の規制当局を納得させるために必要な、「再現性」を示すのに役立ちます。
AMの本当に良いところは、標準化ができることであると考えています。造形を行うためには、「3Dデータ」が必要で、定められたパラメータ(材料設備ごとに決められたレーザ出力、速度など)を使用します。また、AM設備には豊富なモニタリング機能が付いていることが主であり、何か問題がある場合、ここに記されているような統計的な品質管理手法を用いることができれば、問題の特定や再発の防止をデジタルで管理ができ、容易になっていくことが想定されます。このようにAM技術の本質は、実は量産フェーズでこそ生かされるのではないかと思います。
これまでの経験から、AM量産化への道筋では、関与する全ての組織において組織や部門間でのコラボレーションと良好なコミュニケーションが極めて重要であることがわかっています。部品開発プロセスにおいて、設計、材料、製造、および品質部門のエンジニアが互いに連携する必要があります。
これは、(1)にも関係する最も重要な点です。前述の通り、AM技術はすべての製造プロセスを見通して革新していく技術です。一部分の改善ではどうしても成果が上がりづらく、自分のミッションだけを考えてしまうと、デメリットが多く見えてしまう技術でもあります。ただし全体最適化の観点から考えると、これまでの製造法では実現できなかった様々な価値を発見することができます。様々な部門のエンジニアが、それぞれの観点でAM技術を理解し、横断的なプロジェクトを進めることで、初めてこれまでにない価値をAMで生み出すことができるのではないかと思います。
いかがでしたでしょうか?
私も設計者の方々と個別にお話しする際、様々な観点からAMの活用事例をお伝えすることがありますが、やはり横断的なプロジェクトの重要性というものをひしひしと感じています。何らかのテーマを作り部門横断的に、取り組めるようなプロジェクトを作って、AM活用がどのようにできるのか、という点を検討してみるのもよいのではないでしょうか?
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