製品開発・試作のサイクルタイム大幅短縮と量産まで

3Dプリンターでの家づくり?海外の事例は?

先週のYAHOO!ニュースで、3Dプリンターで作られた家が、国内で初めて販売されるというニュースがありました。

 

「国内初」販売へ、3Dプリンターで建てた住宅の全容(2022/1/22 YAHOO!ニュース)

 

ニュースの概要

セレンディクスは、国内初となる3Dプリンターで建てた住宅の予約販売を2月に開始する。建築基準法の対象外となる床面積10平方メートル以下の球体住宅「ソフィア」を、気軽にキャンプを楽しめるグランピング施設など向けに建設する予定。

・ソフィアの原材料はコンクリート、3Dプリンターで天井、床、外壁を建設した上で、内装や電気設備は従来の施工で対応、床面積100平方メートル当たり約24時間で施工が完了する。

・この3Dプリントで作られた家は、「日本よりも高いヨーロッパの断熱性基準をクリアしている。球体の構造は自然災害にも強い」としており、今後、耐震性能の本格的な実証にも取り組む。23年以降には床面積を100平方メートルに広げた3Dプリンター住宅の一般向け販売を目指す。

詳細はこちら

 

「Sphere(セレンディクス株式会社HPより)」

 

 

3Dプリンターを使った建築事例は海外が先行

 

【イタリア】自然素材(もしくは天然材料)をつかった環境にやさしい家

イタリアでは実験的なプロジェクトが盛んで、中でも画期的な事例が、土やわらなどの自然素材(天然材料)を3Dプリンターで造形した家(通称「ライス・ハウス」)です。

ライス・ハウスは、現地の土や粉砕した稲わらなどの混合材料を全長12mのクレーン型3Dプリンターから吐き出し、壁の断面に沿って数センチ厚ごとに円を描きながら積層していくことで建築されました。

建築にかかる期間は、わずか10日間で、天然資源を材料としているので、材料費用はたったの900ユーロ(約10万円)。

壁の内部にはハニカム(蜂の巣模様)構造の空洞があり、ここにもみ殻を投入して断熱性・遮音性を高めることで、冷暖房不要の環境にも優しい家としても注目されています。

 

【オランダ】3Dプリンターでつくるコンクリート橋

3Dプリンターの研究を進めるアイントホーフェン工科大学と、大型の3Dプリンター工場をもつ建設会社BAM Infra(バムインフラ)が、「3Dプリンターでつくられたパーツを組み合わせて橋をつくる」という国が掲げるプロジェクトを産学連携で進めており、2017年には当時世界初だったセメント系材料による3Dプリンター製自転車・歩行者橋を完成させています。また、2019年には世界最長となる29mの3Dプリント製コンクリート橋の完成も成功に収めています。

 

【中国】3Dプリンターによる建設事例が増加中

中国では、民間の建設企業が住宅建築に3Dプリンターを用いる事例が現在も増加中です。

特に上海に本拠を置くWINSUN社(ウィンサン)は、建築用3Dプリンター活用の草分け的企業として知られ、2015年に世界で初めてアパート住宅を3Dプリンターで建築したり、地下室付きの5階建てマンションや宮殿風の建物なども建てたりしています。

同社はサウジアラビアに100台の建築3Dプリンターをリースするなど他国への影響力も大きく、今年のコロナ禍対策として3Dプリンターによる病室を隔離病棟として使うなど時勢への対応も迅速です。

中国国内における3Dプリンターでの建設市場は、急速に拡大しているようです。

 

日本国内においても深刻な人手不足が問題となっている建設業界では、人手をかけずに生産性を向上できる可能性があるAM技術に、大きな注目が集まっています。耐震基準などの法律的な問題は残っているようですが、今後法律的な規制も進展が見込めるかもしれませんね。何よりもAMではこれまでの製造法に縛られない、柔軟な形状をデザインすることが可能という利点があります。

 

材料なども含めて、省資源・短期間で最適な形状の「家」が作れるようになれば、SDGsなど世の中の流れにも最適なエコシステムが構築できるかもしれませんね。

 

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