名古屋大学の小橋 眞 教授、高田 尚記 准教授、 鈴木 飛鳥 助教は、旭精機工業株式会社(尾張旭市)、株式会社フジミインコーポレーテッド(岐阜県各務原市)及びあいち産業科学技術総合センターとの共同研究で、3Dプリンターを用いて内部構造を有する超硬合金の金型の開発に成功したという発表がありました。
名古屋大学によるプレスリリースは以下よりご確認ください。
金属3Dプリンターによる超硬合金製のセンシング金型の開発と性能の実証に成功!(名古屋大学 研究成果発信サイト)
超硬合金とは、具体的にはタングステンかと思われます。金属3Dプリンターは、従来工法では、加工が難しいような高硬度の材質であっても、複雑な形状に造形することができるというメリットがあります。ただし、このタングステンは、融点が高く(約3400℃)、溶融時の性質などから、造形が難しい材質としてもよく知られています。
造形が難しいということは、緻密な造形ができづらい(密度が出づらい)ということになりますが、プレスリリースの内容を見ると、材料も含めて最適な条件を研究されたようです。
また、今回の研究においては、リチウムイオン電池向け製品をはじめとした「大型部品の精密成型」に使用される金型製作技術を対象としているようで、このAMによる金型造形技術が確立することで、冷却やセンシングのための複雑な内部構造を持つ、耐久性の高い3D金型の普及が期待されます。
現在、日本国内においては、「AMで何ができるのか」という点において、依然手探りの部分が多く、このような事例が積極的にリリースされることで、製品の付加価値を向上させるというAMの利点や使い道が広まっていけばよいなと感じています。
今回のように、金型内部での荷重や温度をインライン計測するという目的があってこそ、「どのような形状が最も最適であるのか、実現可能なのか」というアイデアが生まれ、AMによりそれが実現できるというステップになります。現状の機構に満足せずに、「もっと製品を良くしたい」そんな設計者や開発者の思いが、感じられるニュースでした。
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