クラボウが、建設分野(セメント系材料)において、3Dプリンターを用いたメタマテリアル技術の確立を、東京大学との共同研究しており、研究の進捗が進んでいるというニュースリリースがありました。以下は、クラボウのニュースリリースです。
クラボウHPニュースリリース「クラボウと東京大学が3Dプリンティング技術に関する共同研究を推進 ~産学連携によりメタマテリアル技術の確立を目指す~」
・クラボウの化成品事業部と東京大学大学院工学系研究科は、建設用のアディティブ製造装置(3Dプリンター)を用いた造形技術などについて共同研究を本格化、造形物の構造性能評価技術を確立する他、数値シミュレーションに基づくメタマテリアル技術の開発・実証を進め、セメント系材料が持つ物性の向上と新たな物性の獲得を目指すという。
・建設分野で、精緻なデザインを再現する高精度な3Dプリンティング技術と、強度を高めるための構造設計技術の開発や評価、検証に取り組むクラボウと、独自に開発した数値解析技術を生かしてセメント系材料のメタマテリアル技術を研究する東京大学(社会基盤学専攻コンクリート研究室)が両者の持つ技術を融合し、セメント系材料を使ったメタマテリアル技術を研究開発している。
・2023年を目途にこのメタマテリアル技術の確立し、実証実験を行っていく計画で、建設業界の課題解決やセメント系材料の新たな価値創造を目指していくとのこと。また、将来的には、建設用3Dプリンターに利用可能で、かつCO₂削減に貢献できる低炭素型のセメント系材料の開発も共同で行っていく予定。
メタマテリアルとは,電磁波(光)の波長よりも細かな構造体を利用して,物質の電磁気学(光)的な特性を人工的に操作した疑似物質であり、マイクロ波周波数から光波までの幅広い領域に渡る技術と一般的に知られております。特に光学分野においては、同技術を用いることで、光の屈折率を制御し、これまでに実現不可能な性能を持たせることができるようになります。(例としては、レンズ材料にメタマテリアル技術を用いて、負の屈折率を利用し、レンズの凹凸形状を平面化するなど)
また、このメタマテリアルは、電波についても同様の効果を示すので、アンテナ等無線機への活用なども進められているようです。
このメタマテリアルを実現するためには、微細形状を加工する必要があり、光学分野、つまり光波に影響を与えるようなメタマテリアルを実現するためには、ナノオーダ(1㎚)の微細加工が必要となるようです。また、従来の微細加工技術では、加工が難しい三次元構造体を作る必要もあるので、簡単に実現できる技術ではないということです。ただし、電波においては、ミリオーダ(1mm)の間隔で振動することから、㎜単位のサイズの構造物で実現することができます。三次元構造体は、3Dプリンターが最も得意とする構造であるため、通信(電波)分野におけるメタマテリアルの開発には、3Dプリンターを活用することにより、より加速していくことが予想されます。
この研究においては、建設分野、セメント材料におけるメタマテリアル技術の研究がおこなわれており、物質の内部構造をデザインすることで、強度、靭性、遮音性、断熱性などの大幅な向上や圧縮ひずみ硬化特性の発現といった、材料自体では獲得できない新たな物性を獲得することを目標としているようです。また、この技術確立には、高精度な3Dプリンティング技術と、狙った物性を獲得するための数値解析の両方を兼ね備える必要があるとのことです。
これまでにない形状で新たな製品価値をもたらしてくれる可能性がある「メタマテリアル技術」。3Dプリンターであれば、0.1mm単位の微細な三次元構造体を作成することが可能です。このような新しい技術開発に、我々も造形技術を高めながら、積極的にチャレンジしていきたいと考えております。
このコラムカテゴリーの記事一覧はこちらから