先日、ニコンが、ドイツの金属3DプリンタメーカーであるSLM Solutions Group(以下、SLM社)の買収に関するニュースがありました。ニコンは、株式の公開買い付けなどで、今後SLM社の100%子会社化を目指してくそうです。取引総額は6億2200万ユーロ(840億円)になる見込みだとのことです。
ニコンがドイツの金属3DプリンタメーカーSLMを買収、パウダーベッド方式も追加へ(出典:9/6 yahoo!ニュース)(外部リンク)
ニコンは、2019年「レーザーマイスター100A」というデポジション方式の金属3Dプリンターを発売し、金属3Dプリンター(AM)分野の事業を行ってきました。このレーザーマイスターは、デポジション方式であり、既存の構造物に追加で造形をすることができたり、また産業用の金属3Dプリンターとしては、非常にコンパクト。既存の金属3Dプリンターのサイズと比較すると、床面積比でおよそ10分の1程度とのことです。展示会などでも、ニコン社のブースでよく紹介されている機械で、一般の注目度も高い金属3Dプリンター設備であるという印象です。
一方で、緻密な造形(造形の密度や強度)という面では、造形法の関係上、どうしても弱みを抱えており、この部分をカバーするために、現状最も緻密な造形が期待できる「パウダーベッド方式」を採用する、SLMソリューションズの買収を計画したのかなと考えています。
SLMソリューションズの設備は、とりわけ航空・宇宙での実績に特長があり、チタンや銅などの既存のPBF方式(レーザー)の造形で、比較的難しい材質の造形も可能であるという印象があります。一方で、造形面の粗さやその後の二次加工など、ニアネットシェイプの造形には、向きづらいという印象があり、この点をどのように改善するのか、もしくは別の方向性を提示してくるのか、非常に楽しみです。
コロナ禍以降、航空宇宙分野の需要は落ち込みを見せており、SLM社も2021年は2037万ユーロ、前年も3025万ユーロ(日本円でおよそ42億)と二期連続の赤字であったようです。このような難しい経営状況の中、ニコン社は既存技術や得意分野とのシナジーで、どのようにSLM社のかじ取りを行っていくのか、またAM分野での存在感を示していくのか?
今後の展開に注目したいと思います。