二酸化炭素(CO2)の排出に課金して、その削減を促すカーボンプライシングのひとつ「炭素国境調整措置」(CBAM)を欧州連合(EU)が導入する方針とのことです。
CBAMは、環境対策が緩い国からの輸入品に事実上の税を課す措置で、2023年10月から移行期間が始まりました。
移行期間中は、EUに輸出する企業に製品の二酸化炭素(CO2)排出量の報告義務が課されます。2023年から2025年までは輸入事業者に温室効果ガスの排出量の報告を義務付け、それ以降に税金の支払いを義務付ける段階的な導入を予定。課税対象となるのはCO₂排出量が多い「鉄鋼」「セメント」「肥料」「アルミニウム」「電力」の5品目で、課税額は域内の炭素価格に準じるとされています。
移行期間は2025年末に終了予定であり、2026年1月からの輸入ではCBAM設置規則に基づき、輸入量に相当する排出量分の炭素価格を「CBAM証書」の購入というかたちで負担しなければならないとのこと。また、製品の生産プロセスで消費される温冷熱の発生に伴う排出と定義されており、これは自社、他社から供給を問われないため、EUへ輸出を行うメーカーは、自社製造プロセスだけではなく、購入部品まですべてにおいて、二酸化炭素(CO2)排出量の管理を行っていかなければならないとのことです。
つまり、EUへの輸出を考える製品に関しては、二酸化炭素排出量が多い製造プロセスを採用すると、結果的にはコスト高になってしまう。という状況に陥るかもしれず、注意が必要です。
ここで、CO2排出削減と、金属3D造形(金属AM)との関係についてですが、下記のような観点で、金属3D造形(金属AM)は既存の加工方法と比較し、CO2排出削減に対し、大きなメリットを持っています。
金属3D造形(金属AM)は、材料のロスを大きく削減することができます。従来の切削加工や鋳造などの製造方法では、大量の素材が削り出されて廃棄されることがありますが、金属AMでは部品の必要な形状のみを造形するため、材料の効率的な利用が可能です。これにより、材料の生産に伴うエネルギー消費やCO2排出が削減されます。
金属3D造形(金属AM)は部品の複雑な形状や構造を実現することができます。このため、部品の軽量化や最適化(トポロジー設計)が可能となり、車両や航空機などの輸送手段の軽量化が実現されることが期待されます。軽量化は、製品自体の燃費の改善や排出量の削減につながります。
金属3D造形(金属AM)は製造プロセスが近接して行われるため、部品の製造場所と使用場所が近い場合、輸送によるCO2排出を削減することができます。部品の現地製造が可能なため、物流に伴うCO2排出を大幅に削減することができます。
このように、いくつかの点で、金属3D造形(金属AM)は既存の加工法と比較し、CO2排出削減に対し大きく貢献ができる可能性があります。今後カーボンプライシングが進んでいく場合、単純な部品の製造コストだけではなく、その製造プロセスがどれだけCO2排出があるのかという点が、製品コストに大きな影響を与えてくるのかもしれません。このような情勢も踏まえたうえで、自社の製造プロセスを、金属AMを含めた形で、再度検討を進めていく必要があるのかもしれませんね。
<参考文献>
EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)に備える(ジェトロHP)