本日はプラスチック金型など、主に高強度・高硬度が求められる場合に使用されるステンレス鋼材である、SUS420J2について、ご紹介させていただきたいと思います。主に、金属3Dプリンター用のSUS420J2材質である「SUPERSTAR21(Sodick製)」の例を用いて解説をさせていただきます。
SUS420J2はマルテンサイト系ステンレスで、熱処理(焼入・焼もどし)により、高強度、高硬度を得られます。耐食性は一般の焼入鋼よりは優秀ですが、オーステナイト系ステンレス、フェライト系ステンレスおよび析出硬化系ステンレスよりは炭素(C)含有量が高いため劣ります。弊社は、3Dプリンター造形にて、金型を製作する際には、SUS420j2を使用しております。
SUS420J2の耐食性は、一般的な焼入鋼よりは優れていますが、炭素量が多く錆が出やすいため、オーステナイト系及びフェライト系のステンレス鋼よりは劣っています。
一方、前述のとおり、炭素量は一般的なステンレス鋼より多いため、熱処理(焼入れ・焼き戻し)によって高強度・高硬度が得られます。
※金属3Dプリンター向け金属粉末「SUPERSTAR21」の物性例
※金属3Dプリンター向け金属粉末「SUPERSTAR21」における3D造形時の機械特性例
SUS420J2は、日本工業規格(JIS)で定義されたマルテンサイト系ステンレス鋼です。熱処理によって硬度と耐蝕性が向上します。
一般的に、SUS420J2の熱処理には、以下のような工程が含まれます。
・鋼材を加熱する(オーステナイト化):SUS420J2の鋼材を約980℃〜1050℃に加熱し、オーステナイト(非常に硬くて柔軟な組織)にします。
・急冷する(焼入れ):急冷することによってオーステナイトをマルテンサイト(非常に硬くてもろい組織)に変換します。水や油などの冷却媒体を使用することができます。冷却速度が速ければ速いほど、硬度が高くなります。
・再加熱する(焼き戻し):焼き入れによって硬度が高くなりすぎてもろくなったマルテンサイト組織を、適切な温度で再加熱することで、より柔らかく、耐蝕性が向上します。
上記の工程によって、SUS420J2は、高い耐摩耗性、耐蝕性、硬度、耐久性を備えた優れた材料になります。ただし、焼入れ後に過剰な加熱を行うと、組織が粗大化し、硬度や耐蝕性が低下する可能性があります。そのため、適切な熱処理工程を行うことが重要です。
なお、弊社でプラスチック用金型を3Dプリンター造形する際には、「焼き入れ焼き戻し」を推奨しております。熱処理を適切に行うことで、金型の経年劣化を軽減させ、安定した品質金型を量産することができます。
※熱処理を行った後の機械特性などのデータについては、別途お問合せください。
SUS420J2は、プラスチック金型向けの鋼材として使用されることが多い材質の一つです。
高機能な3D水管付き金型も、SUS420J2で製作することが可能です。(金属3Dプリンターで3D水管付き金型を製作)また、その他の用途例としては、バルブや刃物、弁座、直尺、ノズル、医療機器、シャフトなど、耐熱性、耐摩耗性が必要な製品に適しています。