チタン合金のAM造形は、設計自由度の向上、材料効率化、軽量化、そしてカスタマイズ性など、多くのメリットを持ちます。特に高価なチタンを最大限に活かす製造手法として、航空宇宙、医療、自動車などの分野での活用が急速に進んでいます。
チタニウム(Ti)は軽量で高強度、耐腐食性、耐熱性、生体適合性を持つ銀白色の金属です。航空宇宙、医療、海洋、産業、スポーツ用品など幅広い分野で利用されています。製造には主にクロール法が用いられます。その特徴から、ジェットエンジン部品や人工関節、海洋探査機、化学プラント設備に最適な素材とされています。
チタンを使用するメリットは、軽量性、高強度、耐腐食性、生体適合性、耐熱性などが挙げられます。これらの特性により、航空宇宙、医療、海洋、化学産業、高級消費財など、幅広い分野で不可欠な材料となっています。
1. 軽量で高強度
チタンは強度重量比が非常に優れており、鋼鉄と同等の強度を持ちながら、約 45% 軽い。
航空機や宇宙船、自動車部品の軽量化を実現し、燃費向上や性能改善に寄与しています。
2. 優れた耐腐食性
チタンは自然に形成される酸化被膜(酸化チタン)によって、海水、塩分、酸性・塩基性環境に非常に高い耐久性を発揮。
そのため、海洋構造物や船舶、化学プラント設備の寿命を延ばすことができ、長期間使用される医療インプラントにも適しています。
3. 高い生体適合性
チタンは人体に対して無毒であり、アレルギーや拒絶反応を起こしにくいため、 医療分野での人工関節、歯科用インプラント、骨固定具などに理想的な材料となります。
4. 高い耐熱性
チタンの融点は約 1,668℃ と高く、高温環境でも性能を維持。これにより、 ジェットエンジン、排気系パーツ、熱交換器など、高温下での使用に適しています。
5. 磁性を持たない
チタンは非磁性材料で、磁場の影響を受けない。医療用MRI機器の近くで使用でき、電磁干渉を避ける必要がある電子部品やセンサーに適しています。
6. 耐疲労性・耐衝撃性に優れる
チタンは繰り返しの応力に対して非常に高い耐性を持ち、金属疲労を起こしにくいため、 航空機やスポーツ用品など、耐久性が求められる用途に最適です。
7. 環境適応性が高い
チタンは温度や湿度の急激な変化にも強く、極限環境(深海、高空、宇宙)での使用に適する。海洋探査機や宇宙探査機の部材として信頼性が高く、極寒や高温環境下での設備に利用可能。
8. 耐放射線性
チタンは放射線の影響を受けにくい特性があります。原子力関連設備など、放射線にさらされる環境での耐久性が必要な部品です。
9. 審美性
チタンの金属光沢は変色しにくく、美しい外観を長期間維持可能。高級時計やアクセサリーに使用されます。
10. リサイクル性
チタンはリサイクル可能な金属であり、再利用してもその特性をほとんど失わないため、 環境負荷を軽減し、持続可能な資源として注目される。
・チタン合金(Ti-6Al-4V)
最も一般的なチタン合金で、64チタンとも呼ばれます。高強度・軽量・耐腐食性・耐熱性に優れるところが特徴。
成分としては、アルミニウム (6%) とバナジウム (4%) を添加されています。
用途:
航空宇宙分野(ジェットエンジン部品、航空機構造材)、医療分野(インプラント、人工関節)、自動車分野(高性能パーツ)。
・純チタン(Grade 1~Grade 4)
合金成分がほとんど含まれない純チタン。優れた耐腐食性と生体適合性で、インプラントなどの医療分野で主に使用されます。グレードが上がるにつれて強度が高くなる(Grade 1は最も柔らかく、加工性に優れる)。
用途:
医療分野(歯科インプラント)、化学プラント部品、海洋用途(潜水艦、船舶部品)。
そのほかにも、耐熱性が特に高く、航空宇宙分野や高温環境での部品に使用される、「Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo」、や自動車やスポーツ用品に利用される 「Ti-10V-2Fe-3Al」などのチタン合金があります。
チタン合金をAM(3Dプリント)で造形することには、いくつものおすすめ理由があります。まず、材料効率が非常に高い点が挙げられます。チタンは高価な金属ですが、AMでは必要な分だけを使用するため、使用量を最小限に抑えることができます。さらに、設計の自由度が高く、複雑な形状や軽量構造を容易に実現できるため、従来の製造方法では困難なデザインを可能にします。また、部品を一体成型できるため、接合部が不要となり、強度が向上するだけでなく、製造工程も簡略化されます。製造される部品は軽量で高強度、耐腐食性や耐熱性にも優れており、高性能で信頼性の高いものが得られます。
これらのメリットから、AMでのチタン合金の造形は航空宇宙、医療、自動車など、さまざまな分野で最適な製造方法として活用されています。
チタン部品のAMへの置き換えや、新規開発などご興味がありましたら、お気軽にお問合せください。