製品開発・試作のサイクルタイム大幅短縮と量産まで

退役軍用機の部品を3Dプリンターで再利用

今回は、ロールス・ロイスが退役軍用機の部品を3Dプリンターで再利用し、第6世代戦闘機「GCAP」のエンジンに活用するプロジェクトのニュースをご紹介します。

この3Dプリンティング技術は製造業全体のパラダイムシフトをもたらし、持続可能なものづくりの未来を切り開く鍵となりそうです。

日英伊開発の次世代戦闘機に“旧式機”の部品を再利用!? ロールス・ロイスが実証実験を行う
(出典:2025年2/13(木) YAHOO!JAPANニュース)

 

 

記事のポイント

 

1. プロジェクトの概要:Tornado 2 Tempest

2025年2月5日、航空機エンジンメーカーのロールス・ロイスが、軍用機の部品リサイクルプロジェクト「Tornado 2 Tempest」の詳細を発表しました。
このプロジェクトでは、2019年に退役した「トーネード」戦闘攻撃機の部品を粉末化し、3Dプリンターで新しい部品として再生することで、現在開発中の第6世代戦闘機「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」のエンジンに活用するというものです。

 

2. 3Dプリンターを活用したリサイクル技術の仕組み

✅ 退役機の部品を粉末化
高品質な鋼・アルミニウム・チタンなどの希少金属を再利用可能な粉末に加工
✅ 3Dプリンターで新たな部品を製造
粉末化した材料を用い、エンジンブレードやノーズコーンを3Dプリント
試験用エンジン「オルフェウス」に装着し、実証試験を実施
結果は良好で、安全性や耐久性を証明

 

3. この技術がもたらす影響

防衛産業の強化
国内での戦略的金属の確保が可能になり、海外依存を低減
サプライチェーンの安定化に貢献
コスト削減と環境負荷の低減
新規材料の調達コストを削減し、廃棄される機体の有効活用が可能
二酸化炭素排出量の削減につながる
次世代戦闘機開発への貢献
日本・イタリアと共同開発中の**第6世代戦闘機「GCAP」**のエンジンに活用
今後、他の航空機の部品製造にも応用可能

 

4. 3Dプリンティング技術の今後の可能性

① 航空・宇宙分野での進化
軽量・高強度のカーボンファイバーや金属部品を3Dプリントする技術が発展
航空機の機体やエンジンの主要部品の製造プロセスに組み込まれる可能性
② 自動車産業への応用
EV(電気自動車)やF1カーの軽量部品を3Dプリントで製造
製造コスト削減・部品のカスタマイズが容易に
③ 医療・建築分野での利用拡大
3Dプリンターを活用した人工臓器や義肢の製造
住宅建築用の3Dプリント技術が進化し、低コストでの建設が可能に
④ 持続可能な製造技術としての発展
リサイクル材料を活用した3Dプリント技術が拡大
資源の枯渇リスクを低減し、循環型経済の実現に貢献

 

5. 今後の展望

ロールス・ロイスはこの技術をさらに発展させ、他の部品や航空機への応用を進める計画です。
また、今後は民間航空機・自動車・医療・建築・宇宙開発など、多様な分野での3Dプリンティング活用が加速すると考えられます。

 

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