製品開発・試作のサイクルタイム大幅短縮と量産まで

ステンレスの金属3Dプリンター造形|SUS316Lの特性と後加工のポイント

SUS316Lが金属3Dプリンターで主流となっている理由

SUS316Lは、オーステナイト系ステンレス鋼であり、以下の化学成分を含みます。

C:0.03%以下

Cr:16〜18%

Ni:10〜14%

Mo:2〜3%

低炭素(L材)であるため、溶接・再溶融時の粒界腐食が起きにくく、L-PBFにおける急速溶融・凝固サイクルに適しています。

(L-PBFとは、レーザーを熱源とする、パウダーベッド方式のこと。詳細は、ISO/ASTM 52900(AM用語規格)へ)

 

また、

・溶融時の流動性が比較的安定

・クラック感受性が低い

・酸化耐性が高い

といった特性により、初めて金属AMを検討する設計者にも選ばれやすい材料です。

 

 

SUS316L粉末の仕様と品質管理

金属3Dプリンター造形品質は粉末品質に大きく依存します。

一般的な粉末仕様:

・粒径分布:15〜53μm

・真球率:95%以上

・見掛け密度:約4.0 g/cm³

・酸素含有量:0.03%以下推奨

粒径が粗すぎると層厚精度が低下し、細かすぎると流動性が悪化します。再利用粉末では酸素濃度上昇により靭性低下のリスクがあるため、ロット管理が重要です。

 

 

造形時に発生する主な課題

①残留応力と歪み

急速冷却(10⁵〜10⁶ K/s)により熱応力が発生します。特に薄肉形状では反りが顕著になります。

②異方性

Z方向の引張強度はXY方向より5〜15%低下する場合があります。

③表面粗さ

アズビルト状態でのRaは10〜20μm程度。下向き面では20μmを超えることもあります。

④内部欠陥

最適条件下でも密度は99.5%以上ですが、設計や条件によりポロシティが発生します。

 

 

 SUS316Lの機械的特性(代表値)

AM材(応力除去後)の例:

・引張強度:580〜650 MPa

・0.2%耐力:480〜550 MPa

・伸び:30〜45%

・硬度:200〜220 HV

・相対密度:99.5%以上

鋳造材より高強度、鍛造材と同等以上となるケースもあります。

ODECでは、毎回造形時に密度評価を行い、強度面の造形品質の保証を行っています。機械的特性に関するデータもご提供可能ですので、お問合せください。

 

 

熱処理の役割

応力除去焼鈍(例:650℃×2時間)により残留応力を低減します。
必要に応じてHIP処理(例:1,150℃、100MPa)を行うことで内部欠陥を低減し、疲労特性を向上させます。(HIP処理に関する参考:株式会社神戸製鋼所様HP Hot Isostatic Press(HIP:熱間等方圧加圧装置)

 

 

表面粗さと仕上げ工程

AM特有の階段状表面は、流体部品や摺動部では問題となります。

主な仕上げ方法:

・ショットブラスト

・バレル研磨

・流体研磨/電解研磨/化学研磨

・精密切削加工

・表面処理(メッキ等)

H7公差やRa3.2以下を求める場合、切削加工が不可欠です。

 

金属AMの精密切削加工を実現する、ODECの機械加工設備

 

なぜ精密切削加工が重要なのか

金属3Dプリンター単体では以下の保証が困難です。

・真円度

・平面度

・嵌合公差

・同軸度

特に嵌合部、Oリング溝、シール面は仕上げ加工が必須です。

 

 

AM×精密切削の工程設計例

・造形データ作成(サポート設計)

・3D造形

・応力除去(アニール処理)

・二次加工(機械加工)

・仕上げ加工/研磨等

・3Dスキャン/測定検査

AM工程と切削工程を一体で設計することで、精度保証が可能になります。

 

 

SUS316Lの適用分野

・内部流路一体部品

・冷却構造体

・研究機器部品

・医療研究用途

・小ロット試作

 

 

まとめ|金属3Dプリンターと後加工を前提に考える

SUS316Lは金属3Dプリンターに適した材料ですが、

・表面粗さ

・公差精度

・残留応力

・異方性

といった課題があります。

そのため、造形だけで完結させるのではなく、後加工を前提とした工程設計が重要です。

金属AMと精密切削を組み合わせることで、高精度・高機能部品の製作が可能になります。