製品開発・試作のサイクルタイム大幅短縮と量産まで

金属3Dプリンター造形プロセスの見える化とは?【第50回】

今週の日経新聞電子版に以下のようなニュースが掲載されていました。

金属3Dプリンター、造形中の状態「見える化」(日本経済新聞電子版 2021年2月4日)

石川県、AIで新技術

 

ニュースの概要は以下の通り

・石川県工業試験場は人工知能(AI)を活用し、金属3Dプリンターの造形中の状態を「見える化」する仕組みを開発

・金属粉末にレーザーを照射する際のカメラ画像から、造形物の内部の隙間が多いか少ないかを推定する仕組み

・レーザー照射時に溶けた金属の一部が飛び散る火花に着目、火花の形と造形物の密度状態に関係があることが分かり、これをモニタリングに活用

・同試験場は、「この見える化の仕組みを応用すれば、隙間ができた場合に自動的にレーザーを修正するような3Dプリンターが開発できる」と今後の可能性を語る

 

 

金属3Dプリンターにおいて、造形品の密度(空隙欠陥の除去)はもっとも重要な技術の一つで、これを改善するために、設備メーカーも我々のようなサービスビューローも、日夜、開発研究に取り組んでいます。

 

この研究の面白いところは、モニタリングにより、空隙が多いと造形中に判断すると、レーザーパラメーターの修正やレーザーの再照射をAIが自動的に行うといっているところ。

 

レーザーパラメーターというものは、材料ごとに研究を行い(材料開発といいます)、標準的なパラメーター値を見出して、製造に使用していくことが現在の一般的な手法なのですが、パラメーターをAIが自動的に修正するというのは、金属材質における3Dプリンターの適用範囲を圧倒的に広げることができる可能性があるなと思います。

 

ただしパラメーターを修正するにしても、どんなパラメーターに修正されるのか、まだまだ技術的にはハードルが高いような気はします。

 

再照射においても、空隙が防げたとしても、いわゆる二度焼けの状態となった場合、造形の形状に影響が出てくるような気もします。(ここも難しいところで、熱を加えすぎても造形品質は良くなるとは限らないのです。)

 

 

いずれにしても、今後につながる興味深い技術だと思いますので、研究の進展を見守りたいなと思います。

 

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