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金属3Dプリンター造形品の歪み(残留応力)に関して【第51回】

金属3Dプリンターでものづくりを行っていくにあたり、造形品の「歪み」は、避けては通れない問題であり、この「歪み」により、造形品の寸法が狂ったり、割れが発生したり、装置の造形停止が起こったりと、非常に頭を悩まされています。(弊社が使用する3Dシステムズ社の3Dプリンターは、造形品の形状変化により、造形停止が比較的起きやすいところが難点です。)

 

それではなんで、造形品が「歪む」のかというと、「残留応力」という力が材料内部に残り、これが仕上がりの形状に対し「歪み(変形)」を生んでしまうといわれています。では「残留応力」とは何なのかというと・・・wikipediaから抜粋からご紹介させていただきます。

 

 

残留応力とはなにか?

残留応力 (ざんりゅうおうりょく、residual stress)

外力を除去した後でも物体内に存在する応力のことである。フックの法則により残留応力に対応するひずみを、残留ひずみ(ざんりゅうひずみ、residual strain)と呼ぶ。残留応力は様々なメカニズムで発生する。例えば、塑性変形や温度勾配、物質の相転移などがある。溶接時に発生する熱は局所的な材料の膨張を発生させる。溶接中は、溶接されている部品が移動したり、溶融金属が膨張を吸収するが、溶接完了時には、ある部分は他の場所以上に早く冷却され、残留応力が残る結果となる。

 

 

金属3Dプリンター造形で残留応力が発生するメカニズム

金属3Dプリンター(PBF方式)においても、レーザービームにより金属粉末を溶かし(または焼結させ)、形を作っていく製法なので、溶接の際に発生する歪み(残留応力)とメカニズムとしては同じとなります。

簡単に説明いたします。金属3Dプリンターで金属粉末を溶かして造形していくと、レーザーが当たっている高熱の部分、既に造形されて冷えた部分ができ、そこでは、溶かした金属が固まる際の凝固収縮、先に造形した部分が冷える際の熱収縮が起こります。その収縮の差や既に冷えた部分からの引張力が残留応力として働き、造形中の変形または、造形後のひずみや変形の原因となるわけです。

 

また、この残留応力は、造形物の大きさや形状・材質に大きく影響され、基本的に造形品の大きさが大きいほど、残留応力は大きくなります。これが、金属3Dプリンターで製作するもののサイズに制限が出てしまうことの要因の一つでもあります。

 

 

どうやって残留応力による歪みを防止するか?

では、どのように、残留応力による歪みや変形を防止していくか、いくつか方法があります。

 

[1]残留応力を軽減させるための熱処理

金属3Dプリンターの造形品は、造形直後にはベースプレートと呼ばれる金属の板にくっついた状態で出来上がります。残留応力の力は非常に大きく、形状によっては、このベースプレートから造形品が反り返って剥離してしまうこともあるのですが、基本的には、ベースプレートにより拘束されています。このベースプレートから切り離す前に熱処理を行うことで、切り離し後の造形品の反りを防止することができます。※この場合、熱処理を行わないと、切り離し後に「残留応力が解放」され、造形品の形状を変化させてしまいます。

 

[2]造形中の反りや変形を軽減するための造形サポートの補強

上記に挙げた通り、残留応力の力は大きく、ベースプレートから造形品が剥離するほどの変形が起こることがあります。そのため、しっかりとしたサポートを造形品に設計・配置することで、造形中の剥離を防止する必要が出てきます。これにより造形中の変形を軽減することが可能です。

 

[3]形状設計による対策

熱処理やサポートなどで、残留応力の影響を軽減することはできますが、完全になくすということは、製法上不可能であるといえます。そのため、設計時点で残留応力の与える影響を予測可能であれば、変形に耐えられる設計にしておくことや、ラティス・肉抜きなど残留応力が発生しづらい形状としておくことが対策として考えうるものとなります。

 

 

非常に頭が痛い問題である、造形品の歪み(変形)問題。金属3Dプリンターのものづくりにかかわる、装置メーカーやサービスビューローなど、すべての方がいろいろな工夫や対策を考えていることと思います。この残留応力を抑制できる専門工法なども発表されたりしているようです。

我々ODECも、トライアンドエラーを繰り返しながら、この問題に対し、取り組んでいきたいと思います。