製品開発・試作のサイクルタイム大幅短縮と量産まで

3Dプリンターで造形可能な鉄系材料について【第60回】

3Dプリンターで造形可能な鉄系材料として、ご提案できる材料は「マレージング鋼」となります。

 

一般的な金属加工で鉄系の材料を選定する場合は、機械構造用炭素鋼鋼材「S45C・S50C」や一般構造用圧延鋼板「SS400」、硬度が必要な場合は、工具鋼「SK材、SKD材」などが一般的かと思います。

しかし、残念ながらこのような材質を造形するためには、3Dプリンター用の粉末材料の開発(ガスアトマイズ)、造形パラメータの開発が必須となりますので、現段階では対応ができていません。(装置メーカー、材料メーカーを含めた今後の開発が期待されます)

 

「マレージング鋼」は、各社の金属3Dプリンター装置でも標準的にラインナップされている金属材質で、この分野で鉄系材料といったら、「マレージング鋼」となります。

 

「マレージング鋼」の最も大きな特徴は、高硬度の製品が造形できるという点です。時効処理(熱処理)後の硬度は、工具鋼にも引けを取らないので、硬度・強度が重要な製品開発や製造を検討されている場合は、是非お勧めしたい材質であります。

 

 

鉄系材料(マレージング鋼)の特徴

マレージング鋼は、航空・宇宙分野の構造材として開発された、硬度、靭性、強度など高い機械的性質をもつ特殊鋼である。金属成分は、炭素の含有量を減らした鋼(0.03 % 以下)で、Ni 18 %と Co 10 %などを含んでいる。高硬度、高強度の特性をもつため、折損対策に最適な特殊鋼となっている。また、通常の切削加工品などにおいても、時効処理(熱処理)によってさらに強度を向上して使われることが一般的である。熱処理後の強度は2000MPa級と、一般の構造用鋼よりも強靭である。

 

 

鉄系材料(マレージング鋼)の密度と化学成分

Ni  17.00-19.00%
Co  9.00-11.00%
Mo  4.00-6.00%
Ti  0.90-1.10%
Si  ≤1.00%
Mn  ≤1.00%
C  ≤0.03%

Fe:残部

密度:99.5%以上

 

材料の特性については、以下の資料を参考にお願いします。(3Dsystems社の資料で英文表記となります)

・マレージング鋼材料データシート(3Dsystems)

 

 

鉄系材料(マレージング鋼)の適用製品事例

高強度であることから、ばね用の材料やエンジン部品などに使われることが多いです。身近な例でいうとゴルフクラブのヘッドに使われたりもします。3Dプリンターでの製作例としては、金型などに使用されることが多いです。特に3Dプリンターの特性を生かした、冷却水管付きの金型は、射出成型製造のサイクルタイム削減に多くの企業が採用しています。

 

 

いかがでしたでしょうか?

マレージング鋼は溶接性が高いため、3Dプリンターとの相性がよく、一般的に使用されている材料となります。もし強度に不安を抱えて、3Dプリンターによる開発を保留している製品があれば、一度マレージング鋼を検討してみるのはいかがでしょうか?

不明点などがあれば、お問合せhttp://3d.kinzoku-kakou-odec.com/contact/にて承っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

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