一般的なPBF(パウダーベッド方式)の金属3Dプリンターでの造形を行う場合、「サポート材」を同時に造形を行う必要があり、「どのようにサポートを配置するか」「いかにサポートが少なくなる形状にリフォームするか」など、造形前の検討が非常に重要となってきます。また、サポートの除去についても検討が必要で、サポートの設置面を手加工で除去をする場合、該当の面が荒れてしまうので、どのように除去をするか、機械加工を採用できないかということも、高品質の3D造形品を製作するうえで欠かせないことです。
さて、今週米Velo3D社が、大型の造形が可能な、LPBF(レーザーパウダーベッド方式)の金属3Dプリンターをリリースしたとのニュースがありました。
直径600mm×高さ550mmの大型造形が可能な金属3Dプリンター「Sapphire XC」(2022/02/03 fabcross)
・Velo3Dは、直径600×高さ550mmの造形が可能な金属3Dプリンターの最新機種「Sapphire XC」を航空宇宙分野の顧客へ出荷したと発表。
・Sapphire XC(同、金属3Dプリンター)の最大造形サイズは、直径600×高さ550mmと、従来機種「Sapphire」の同315mm×400mmよりも造形容量を400%拡大。
・金属粉末層を一層ずつ融解する1kWレーザーを従来の2個から8個に増やし、非接触式リコーターを2倍高速化することで、オーバーヘッドタイムを大幅に削減。それらにより、生産性を最大400%向上し、生産コストを最大75%削減。
・対応可能な材料は、インコネル718/625、Hastelloy X、Hastelloy C22、アルミニウム、Scalmalloy、チタン合金(Ti-6Al-4V)など。航空、宇宙、防衛、ガス、石油、エネルギーといった先端テクノロジー分野で用いられる、ミッションクリティカルな産業用部品をさまざまな材料で造形可能。
さて、一番注目した点としては、このVero3Dの金属3Dプリンターは、「SupportFree」というシステムが採用されており、サポート材無しで、一定の角度以上(※)のオーバーハング/アンダーカット部分の造形が可能で、サポート材の造形・除去・後加工にかかる手間とコストを、ほぼ削減できるとしています。
※一般的には、45°未満の角度がついた部分を造形する場合は、該当下部に「サポート形状」を同時に造形しないと、正常な造形ができないとされています。
造形設備に関しても、1kWのレーザが8本搭載されており、相当高性能な造形機でもあるので、導入には非常に大きな投資が必要になるのではないかと予測されます。そのため、現状だと航空宇宙関連など高付加価値の製品への適用を探っていくというようになっていくかと思います。
現在のところ、このようなVero3Dのサポートフリーのシステムは各社の金属3Dプリンターには採用されていないようです。ただし、このような機能は、造形機を使用するユーザとして非常に魅力的であることも確かなので、各社開発は行われていくのではないかと考えています。実際同設備で造形されたものが、どの程度の精度を実現できるのか、今後の展開に注視していきたいと思います。
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