弊社の3D製作では、ステンレスの製作依頼が多く、その中でも17-4PH(SUS630)が造形的に安定するということもあり、一番使用頻度が高いです。そんな17-4PH(SUS630)ですが、改めて、材料の特徴や3D製作を行う点で気になる部分を掘り下げていこうと思います。
17-4PH(SUS630)は、析出硬化処理によりマルテンサイト地に金属間化合物を生じさせ、非常に高い硬度を得られるステンレスです。析出硬化とは固溶化熱処理(液体化熱処理)の後、時効硬化(析出硬化)を行って硬化させることを言います。炭素量は0.05%程度で、16%クロム-4%ニッケル系ので銅を4%含んでいます。
耐食性は、オーステナイト系と比べると劣るものの、フェライト系よりも優れています。(オーステナイト系>析出硬化系>フェライト系)
また磁性を持つステンレス鋼であるという特徴があるので、磁気を扱う場所で使用することはできません。
クロム(Cr):15.0~17.5
ニッケル(Ni):3.0~5.0
銅(Cu):3.0~5.0
ケイ素(Si):<1.0
マンガン(Mn):<1.0
ニオブ(Nb):0.15~0.45
鉄(Fe):残部
高硬度でかつステンレスということで耐食性に優れますので、下記のような用途で使用されることが一般的です。
・航空機用部品
・各種動力伝達、搬送用機構部品(シャフト、タービン、スチールベルトなど)
・ばね材
・医療用(外科用)部品
17-4PH(SUS630)は、熱処理を行うことで、機械特性(強度)を向上させることができます。この熱処理を、析出硬化処理と言います。析出硬化処理は、500℃前後で行いますので、真空炉及び大気炉どちらも選択可能です。また熱処理後の硬度はHRC40程度ですので、熱処理後の加工も行うことはできます。また、熱処理後の寸法変化は統計的に、およそマイナス0.10%~0.15%縮む傾向があり、寸法精度が厳しい製品の場合は、熱処理前と熱処理後の寸法変化に注意をする必要があります。
析出硬化処理については、以下のコラムで詳細内容を紹介しています。
【第11回】析出硬化処理とは~SUS630造形物に対する熱処理
ステンレス系の材質では、SUS316Lなどと比較し、造形がしやすい材質であるという印象があります。ただし、前述の通り析出硬化処理を行う場合など、寸法変化が起こる可能性があるので、その点を見越して設計データを微調整することや、二次加工を行うことでより高品質な3D造形品を製作できることかと思います。