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金属3Dプリンターで造形依頼する際に押さえておきたいポイント

金属3Dプリンターは、複雑な形状や微細構造の再現や部品の一体化など、これまでに製作することが難しかった製品や部品を作ることができる新しい工法です。また、新しい工法であり、造形設備も比較的高額ですので、まずは、自社で設備導入をするよりも、製作ノウハウがある造形受託会社に依頼を行った方がよい場合が多いです。しかし、金属3Dプリンターにおける造形依頼を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを事前に把握しておく必要があります。以下に、依頼前に確認すべき事項を解説します。

 

1. 金属3Dプリンターで製作を行う目的と使用条件の明確化

最初に、製作する部品をなぜ金属3Dプリンターで作るのか、目的使用条件を明確にすることが大切です。

 

・使用環境:高温・低温、腐食性環境などに対応する必要があるか。

・強度要件:どの程度の荷重や応力に耐える必要があるか。

・寸法精度:どれだけの精度で製作する必要があるか。

 

金属3Dプリンターで製作する場合は、鋼材等で一般的に使用される材質と造形可能な材質が異なる場合があります。これらの情報を共有することで、適切な材料選定や製造プロセスの提案を行ってもらえるようになります。また必要な寸法精度や表面の粗さレベルに関する情報も必要です。寸法精度が必要な製品の場合は、通常二次加工が必要となりますが、どこまでの寸法精度が必要なのかも明確にしておく必要があります。

 

 

2. 設計データの準備

金属3Dプリンターでの造形を依頼する場合、3Dデータ(STL形式やSTEP形式)が必要です。造形の依頼先により、3Dデータの作成までを請け負ってくれる場合もあります。

 

・データの形式:STEP形式、IGES形式、Parasolid形式等の中間ファイルなど、サービス提供者が対応可能な形式でデータを用意します。CADソフトのネイティブファイルで依頼できるケースもあるので、造形依頼先と相談を行ってください。

・設計の最適化:サポート材の削減や製造後の仕上げを考慮した設計(DFAM: Design for Additive Manufacturing)が推奨されます。

・寸法公差の指定:仕上げ工程に関わる寸法精度を明確にしましょう。寸法公差が記載された図面を提供することで、必要な公差指定がスムーズに進みます。

必要であれば、依頼先に設計相談をすることも可能です。

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3. 材料の選定

金属3Dプリンターで使用できる材料は多岐にわたります。代表的なものとして以下があります。

 

・ステンレス鋼:耐腐食性と強度が必要な場合に最適。

・アルミニウム:軽量で熱伝導性が高い。

・銅合金:熱伝導性が高く、加熱コイルなどによく使用されます。

・チタン:高強度かつ軽量で、生体適合性が必要な場合に適している。

・インコネル:高温環境下での使用に耐えられる耐熱合金。

 

製作を検討している部品の使用条件に応じて、最適な材料を選定しましょう。また造形委託先により造形可能な材料も変わる場合がありますので、その点もしっかりと相談する必要があります。

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金属3Dプリンター材料に関して

 

 

4. コストと納期の確認

金属3Dプリンターでの製作は、形状や材料によってコストが変動します。以下の要素を確認してください。

・材料コスト:使用する金属粉末の種類と量。同じ材質の材料であっても、造形依頼先により大きく価格が異なるケースがあります。

・製造コスト:造形に必要な時間や後処理(二次加工、研磨、熱処理など)の有無。難しい形状の場合は、複数回造形を行うことも検討する必要があります。

・納期:金属3Dプリンターで造形を行う場合、短納期で製作が可能と考えがちですが、ちゃんと仕様FIXしないと、必要としているものにならない可能性があります。また、製造の難易度や設備の稼働状況に応じても異なります。事前にスケジュールを確認することが重要です。

 

 

5. 後処理と仕上げ(二次加工)の考慮

金属3Dプリンターで製作された部品は、製造後に以下のような後処理や仕上げ(二次加工)が必要になる場合があります。

 

・サポート材の除去:製造時に使用されたサポートを取り除く。サポート材をどのように設計するのかという点が、造形におけるノウハウにもなっています。

・熱処理:残留応力の除去や材料特性の向上のための熱処理が必要となります。特に銅合金などは、熱伝導性を高めるための熱処理が必要となります。

・二次加工:金属3Dプリンターで造形された製品は、一般的に0.2~0.3程度の寸法ズレ(3Dデータと比較し)が発生します。造形方式や材質、形状により、それ以上にずれてしまうケースがあります。特にネジ部や他製品との嵌合部については、二次加工が必須となります。

・表面仕上げ:金属3Dプリンターで造形された製品は、表面の粗さが切削などの既存工法と比較すると粗く仕上がります。例えば、切削加工品と同等レベルの表面粗さが必要な場合、ショットブラスト、研磨加工などの処理が必要となります。特に内部構造の仕上げが必要な場合は、どのような仕上げ方法を行うことができるか、よく検討をする必要があります。

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6. 造形委託先の選定

金属3Dプリンターでの造形可能な方式や使用可能な設備は造形委託先(サービスビューロー)によって異なります。以下の点を確認すると良いでしょう。

・設備の種類:使用している金属3Dプリンターの造形方式や対応可能な材料を確認しましょう。金属の産業用部品を造形する上では、パウダーベッド方式による造形が一般的ですが、どのようなものを製作したいかどうかにより、最適な造形方式が異なるケースがあります。また、設備や材料の材質により、造形可能な大きさが異なるケースがありますので、その点も確認してください。

・造形の実績:これまでのプロジェクト事例や顧客の評価など、造形の実績を確認します。寸法精度が必要な製品を造形したい場合は、どの程度の二次加工を行うことができるのかなどもしっかりと確認を行う必要があります。

・品質保証・サポート体制:造形をする上での設計相談や製造後のフォローアップがあるかを確認します。特に、品質保証においては、造形委託先により、差がありますので、しっかりと確認する必要があります。

 

以上のようなポイントを踏まえて、造形委託先を選定してください。ODECの金属3Dプリンターの造形受託サービスでは、初めて依頼する場合も、専門の担当者が、上記のようなポイントを踏まえて、製作の成功をサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

3Dプリント品の二次加工設備