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AM(3Dプリンター)関連 用語解説集(4)【第81回】

今回は、主にAM(3Dプリンター)の造形方法にかかわるキーワードを解説します。

 

 

SLS(レーザー焼結法)

SLS(Selective laser sintering)は、金属3Dプリンターの中では最も有名な製法の一つで、レーザー焼結法とも呼ばれます。粉末状の素材(金属、ナイロン、セラミックなど)にレーザービームを照射して焼結させる方法であり、レーザー出力は500Wまでのものが一般的に使用されています。

レーザー焼結法(SLS)の最大のメリットは、材料によっては最大100%の密度で、従来の物質本来が持つ材質と同等に近い材料特性を実現することができ、最終製品が製造可能であること。一方で、装置そのものが高額になることや造形表面が荒くなってしまう(ざらざら感が残る)などのデメリットもあります。

 

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SLM(レーザー溶融法)

SLM(Selective laser melting)は、レーザー溶融法とも呼ばれ、金属粉末をレーザービーム熱源により、溶かして造形する技術です。SLSとの違いは、金属粉末を「焼結」させて固めるのか、「溶かして」固めるのか、の違いにあります。SLMもSLS同様、実際の金属合金を使い高精度で機械的強度を持つ金属パーツが作れるというメリットがあります。

近年では、SLSを採用している設備はナイロン系、SLMを採用する設備は金属系の材質に絞られてきている印象があります。

 

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EBM(電子ビーム溶解法)

EBM(Electron Beam Melting)は、電子ビームを熱源として、金属粉末を溶かして固める技術です。電子ビーム溶解法とも呼びます。この電子ビーム溶解法は、ビームの高出力、造形スピードが高速であることが特長で、ビーム出力はkWクラスの出力設定が可能です。この造形方式は、GE傘下のArcamによりほぼ独占状態となっており、周辺技術及び特許も同社がおおよそおさえています。

現在のところ、精度ではレーザービームにおとりますが、銅合金やチタンなどレーザービームでは造形が難しい材質が造形できるなど、適用分野により採用を考えたい造形方法です。

 

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パウダーベッド方式(PBF)

パウダーベッド方式は、金属粉末を敷き詰めた床(ベースプレート)に光線を照射し、その熱で焼結・溶融させる方式です。ISO分類では、粉末床溶融結合法(Powder Bed Fusion)と呼ばれます。球形の金属粉末のサイズは、10μm~60μmとなっています。球形サイズをそろえた方がよいのか、または、ばらつきがあってもよいのかという点は、造形する装置の仕様や造形したい製品によって異なります。

敷き詰めた金属粉末の積層厚みは20μm~50μmで、一層一層金属粉末を敷き詰め、焼結または溶融を繰り返し積み重ねて造形します。金属のほかにナイロンや樹脂も用いられるケースがあります。

造形の精度や強度面から、金属の最終製品を製造できる造形法としては、最も有力な方式です。一方で設備が高額になるなど、コスト面におけるデメリットも存在します。

 

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デポジション方式(DED)

デポジション方式は、金属粉末を吹き付けながらレーザー光を照射することで肉盛り溶接する方式です。ISO分類では、指向性エネルギー堆積法(Directed Energy Deposition)と呼ばれます。

デポジション方式の強みは、異種材料を組み合わせた造形ができること、パウダーベッド方式と比較すると、造形スピードが速く、大型の造形品を製造することができるというメリットがあります。一方で、パウダーベッド方式同様に設備が高額になるという点や、表面の仕上がりが粗い、造形密度が出づらい(強度に課題)、造形可能な形状に制限があるなどデメリットも存在します。

 

 

FDM方式(BMD方式)

FDM方式とは、米国Stratasys社が開発した方式で、主に樹脂3Dプリンターを中心に、主流の造形方式となっています。ISO分類では、熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling)と呼ばれます。

造形の方法は、熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、ソフトクリーム製造機のようなイメージで、一筆書きで1層1層積み重ねて造形していきます。量産で実際に使用される素材と同じ材料(本物の熱可塑性樹脂)を使用できるため、最終製品として製造することができます。

一方で金属を造形する場合は、BMD方式(Bound Metal Deposition)と呼ばれる方法で製造することができます。このBMD方式は、金属とバインダー(ポリマーとワックスなどの素材)を混合した材料を熱で溶解し、FDM方式と同じようにノズルから押し出し、積層造形を行っていきます。その後、造形されたものからバインダーを除去するために脱脂処理を行い、金属を焼結させることで完成させます。この方式は、金属3Dプリンターのデメリットの一つである、サポート材を別材質で造形可能なので、取り外しが容易になるというメリットがあります。一方で、脱脂・焼結工程にて、造形品の大きさが縮小することから、精度面や密度面(強度)に課題を抱える造形法といえます。

 

 

光造形(SLA法)

最も古くから存在するAM(3D)の造形方法の一つ。SLA法式とも呼ばれ、ISO分類では、液槽光重合法(Vat PhotoPolymerization)と規定されます。

液体状の 光硬化性樹脂 に紫外線レーザーを照射すると、光に触れた部分が硬化します。SLA法式では、それを一層ずつ積層していくことで造形を行っていきます。この方式は、高精細かつ表面の滑らかな造形物を作成することが可能です。

さらに、SLA法式の中でも、一か所にレーザー照射を行わず、プロジェクターのように像を作り、一括面露光する「DLP法式」というものもあります。造形物の面積が広い場合はSLA法式と比較して高速露光できることが強みですが、像を作る際、ピクセル単位で描画することから、照射する範囲を広げると解像度が落ち寸法精度が出にくく、造形物の表面は水平・垂直の両方向に積層痕(段差)が出てしまうというデメリットもあります。また光造形方式は、UVで硬化をさせていくので、紫外線における劣化が起きます。そのため、太陽光が当たる場所での使用は難しく、長期間使用される製品には向きません。

 

 

マテリアルジェッティング(インクジェット)方式

通称では、インクジェット方式と呼ばれます。ISO分類では、材料噴射法(Material Jetting/マテリアルジェッティング)と規定されます。

その名の通り、材料を噴射し、それに対し光を当てて1層1層積層していきます。構造が通常のプリンターでいう「インクジェットプリンター」に類似していることから、インクジェット方式と呼ばれています。特徴としては、高精細でリアルな造形物が作れるという点があります。またフルカラー造形を行うこともできますので、後から塗装を行う必要がなく、色にこだわるような製品やデザインに向いているといえます。一方で強度や耐久性という面ではFDM方式に劣り、光造形方式と同様にUVによる劣化も起こるというデメリットがあります。

 

 

バインダージェット方式

バインダージェット方式は、平らに敷き詰めた金属の粉末にノズルから選択的に液体の結合材(バインダ)を噴射して固形化する方式で、材料には金属以外にも樹脂、石膏、砂などがあり様々な用途で使用されています。ISO分類では、結合材噴射法(Binder jetting)と規定されます。

樹脂材料の場合、バインダに着色して吹き付けることでカラー表現も可能です。この造形方式によると、サポート材が不要となることが大きなメリット一つで、造形速度も速いです。ただし、この方式はバインダーを使用することから、造形後の脱脂・焼結工程が必要となります。そのため、表面の粗さの問題や、造形品の精度・強度面に課題を抱える造形方法ともいえます。

 

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